誤報とはいえない「中学武道に銃剣道を追加 体育で「異性への関心」は残る」

朝日新聞
2017年3月31日
中学武道に銃剣道を追加 体育で「異性への関心」は残る

(引用者注:小中学校の新学習指導要領と幼稚園の新教育要領に)「学校や地域の実態に応じて種目が選択できるよう」として、中学の武道に新たに「銃剣道」を加え、武道9種目を示した。

http://www.asahi.com/articles/ASK3Z31FPK3ZUTIL005.html

1 報道内容に事実に反する部分があるか(Y/N)
2 それは報道内容の主旨に影響するか(Y/N)
3 報道時点の既知の事実から合理的に推論できる内容か(Y/N)

1=N、2=NE、3=Y
判定:誤報とはいえない

「中学の武道に新たに「銃剣道」を加え」という部分は、新学習指導要領に明記されたことを意味しており、従来も「学校や地域の実態に応じて種目が選択」できる状態ではあった。ただし、その根拠は指導要領解説「保健体育編」の巻末参考資料に、日本武道協議会加盟団体の実施種目のひとつとして提示されている程度で学習指導要領本体に明示された場合とは、受ける印象が大きく異なる。新たに明示されたのは銃剣道のみではないが、武道必修化の流れと2月の中学校学習指導要領案では消えていた銃剣道が最終的に復活・追加されたことは、安倍政権の政治姿勢や背後の政治団体・ロビー団体の動向とあわせて報道機関が重視して当然の内容にすぎない。

朝日新聞は翌4月1日に以下のような記事を出しており、文中を考慮すれば、従来選択できなかった銃剣道が選択できるようになったと解釈する余地はない(実際に公立中1校が授業で実施していることを翌4月1日付の朝刊で報じている)。
中学武道に追加の「銃剣道」とは? 旧日本軍訓練の流れ(水沢健一、宮嶋加菜子、2017年4月1日05時01分)

当該朝日新聞記事に対してミスリードだという指摘があるが、これに対する回答も適切で問題はない。

(Re:お答えします)銃剣道、中学指導要領に(2017年4月7日05時00分)


中学武道に銃剣道を追加 体育で「異性への関心」は残る

水沢健一 2017年3月31日05時20分
 松野博一文部科学相は31日付の官報で、小中学校の新学習指導要領と幼稚園の新教育要領を告示した。改訂案にパブリックコメントで寄せられた意見を踏まえ、「聖徳太子」などの歴史用語を従来の表記に戻す異例の修正をした。その一方で、性的少数者(LGBTなど)への配慮から異論があった「異性への関心」や、幼稚園で国歌に親しむという記述は残った。
 2月に示された改訂案には計1万1210件の意見が寄せられ、135件の修正があった。
 「聖徳太子」には数千件の意見があった。改訂案では、学会などでのこれまでの歴史研究の成果を踏まえて「厩戸王(うまやどのおう)」との併記にしたが、「歴史教育の連続性がなくなる」などの批判が相次ぎ、元に戻した。文科省教育課程課は「我が国が伝えてきた歴史上の言葉を次の世代に伝えていくことも重要」と説明する。
 改訂案については、保守系の「新しい歴史教科書をつくる会」が「聖徳太子を抹殺すれば、古代史のストーリーはほとんど崩壊する」などと批判。意見を送るよう会員らに働きかけていた。同会は修正を「大勝利」としている。
 このほか「学校や地域の実態に応じて種目が選択できるよう」として、中学の武道に新たに「銃剣道」を加え、武道9種目を示した。
 小学校体育の指導要領で「異性への関心が芽生える」とした記述をめぐって、この記述をなくし、新たにLGBTなど性的少数者について盛り込むよう求める意見があったが、文科省は「LGBTを指導内容として扱うのは、保護者や国民の理解などを考慮すると難しい」としている。
 幼稚園で「伝統的な行事、国歌、唱歌(中略)に親しんだり」するとの記述には、幼児に国歌を強制することを懸念する意見もあったが、「慣れ親しむ趣旨を丁寧に説明していく」として修正しなかった。
 このほか新指導要領では、小3から英語を始めるために授業時間を増やし、「質も量も」を鮮明にした。社会では竹島尖閣諸島を「固有の領土」と初めて明記したほか、「公共の精神」「道徳心」などを重視する改正教育基本法の理念を強く反映した内容となっている。(水沢健一)

■学習指導要領をめぐる用語の変遷
(現行→改訂案→告示)
聖徳太子
〈小学校〉聖徳太子聖徳太子厩戸王)→聖徳太子
〈中学校〉聖徳太子厩戸王聖徳太子)→聖徳太子
元寇(げんこう)】
〈中学校〉元寇→モンゴルの襲来(元寇)→元寇モンゴル帝国の襲来)
鎖国
〈小学校〉鎖国→幕府の対外政策→鎖国などの幕府の政策
〈中学校〉鎖国政策→江戸幕府の対外政策→鎖国などの幕府の対外政策

http://www.asahi.com/articles/ASK3Z31FPK3ZUTIL005.html

(Re:お答えします)銃剣道、中学指導要領に

2017年4月7日05時00分
 新しい学習指導要領と「銃剣道」について報じた3月31日付朝刊の記事(東京、名古屋本社最終版)について、一般社団法人日本報道検証機構から「告示された新指導要領のもとで銃剣道が新たに選択できるように追記されたとの誤解を与える報道内容になっている」という指摘をいただきました。
 ■今回、新たに明記
 この記事では、新しい学習指導要領について「『学校や地域の実態に応じて種目が選択できるよう』として、中学の武道に新たに『銃剣道』を加え、武道9種目を示した」としました。旧日本軍の戦闘訓練に使われていた銃剣術の流れをくむ「銃剣道」が、新中学校学習指導要領に新たに明記された点に着目して報じたものです。
 現行の中学校指導要領(2008年告示)では銃剣道は具体例として示されていません。ただ、柔道、剣道、相撲を例示し、さらに「地域や学校の実態に応じて、なぎなたなどのその他の武道についても履修させることができる」とされています。指導要領について詳述した「解説」の「保健体育編」の参考資料に、日本武道協議会加盟団体の実施種目として柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道少林寺拳法なぎなたとともに銃剣道が挙がっています。実際に公立中1校が授業で実施していることを翌4月1日付の朝刊で報じています。
 2月公表の指導要領の改訂案の段階では、武道について柔道、剣道、相撲、空手道、なぎなた弓道合気道少林寺拳法の8種目を例示。「我が国固有の伝統と文化により一層触れることができるようにすること」としました。そのうえで、パブリックコメントで意見を募りました。
 銃剣道が明記されなかったことに対し、公益社団法人全日本銃剣道連盟は3月、銃剣道を指導要領に明記するよう求める要望書をスポーツ庁に提出。さらに、自民党国会議員の中には、銃剣道の明示を求め、パブリックコメントに意見を投稿するよう促す活動もあり、銃剣道が指導要領に記載されるかどうかが、関係者にとって焦点になっていました。最終的に告示された指導要領(21年度から実施)には、8種目に加えて銃剣道も記載されました。
 今後ともわかりやすい記事を心がけます。
 (社会部次長・西山公隆)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12880437.html