誤報判定・「「一般人も捜査」は野党の「言葉遊び」」

産経新聞
2017年5月15日
【テロ等準備罪を考える】「一般人も捜査」は野党の「言葉遊び」

 一般人は捜査対象に100%ならないのか-。「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正案をめぐり、野党が国会でこんな質問を繰り返している。テロ組織や暴力団など組織的犯罪集団に対象を限定しているものの、一般人に対する刑事告発の場合、「捜査しなければ、嫌疑があるかないか分からないのではないか」(民進党逢坂誠二衆院議員)というのだ。
 これに対し、検察幹部の一人は「言葉遊びだ」と、ため息交じりで話す。告訴・告発が捜査機関に持ち込まれ受理されると、嫌疑の有無を確認することになる。嫌疑が不十分であったり、嫌疑が全くなかったりすれば、さまざまな事情を考慮して検察官が不起訴にし、具体的な嫌疑があれば、本格的な捜査に着手するという流れだ。

http://www.sankei.com/affairs/news/170515/afr1705150031-n1.html

「告訴・告発が捜査機関に持ち込まれ受理されると、嫌疑の有無を確認することになる。嫌疑が不十分であったり、嫌疑が全くなかったりすれば、さまざまな事情を考慮して検察官が不起訴にし、具体的な嫌疑があれば、本格的な捜査に着手するという流れ」

以下は法務省が公開している刑事事件フローチャートである。

f:id:JMEC:20170525011049g:plain
捜査
  捜査とは,捜査機関が,犯罪があると思料するときに,公訴の提起及びその遂行のため,犯人及び証拠を発見,収集,保全する手続のことをいいます。

http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji09.html

そして以下は警視庁が公開している刑事手続きの流れである。

f:id:JMEC:20170525011043g:plain
犯人を発見し、証拠を収集することなどによって、事案を明らかにすることを捜査といいます。

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sodan/shien/hanzai2.html

警察機関の捜査は「届出、110番通報等」から開始され、検察の捜査は「告訴・告発 投書等」あるいは「警察機関等からの送致」から開始される。
産経記事にある「具体的な嫌疑があれば、本格的な捜査に着手する」という流れは明確な誤りで、この時点で始まるのは裁判である。
産経は記事中で「告訴・告発が捜査機関に持ち込まれ受理されると、嫌疑の有無を確認すること」を捜査と解釈していないが、警視庁の記載を見てもわかる通り、「嫌疑の有無を確認すること」が警察機関での捜査に他ならない。

1 報道内容に事実に反する部分があるか(Y/N)
2 それは報道内容の主旨に影響するか(Y/N)
3 報道時点の既知の事実から合理的に推論できる内容か(Y/N)

1=Y、2=Y、3=N
判定:誤報


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